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天気の子 感想

天気の子についての感想

君の名はよりずっとシビアで陰鬱な東京が描写されていると思いました。客観的に見れば朝日が反射して綺麗なビル街でも、少し治安の悪い街中に入ればお金がなくて身体を売る少女や簡単に暴力を振るう大人がたくさんいて、しかも人に対して冷淡な人が多いと感じる。例えば帆高くんが一人線路を走るシーンでも周りの人たちは頭がおかしい少年として処理している。無知なくせに他人を決めつけ批判するSNSを写し取ったようなシーンだった。家族がいない子供、お金のない子供というのはこんなに居場所がないものなのだと痛感した。実際映画を観にくるような人はお金に困ってない人が多いと思うのでこの描写がフィクションではないと重く受け止める人はどれくらいいるのだろう。

須賀さん: 彼は自分と似ているからと言う理由で帆高の面倒を見ながらも自分の子供の親権を取ることを優先していた。たしかに赤の他人の面倒を見始めたところで優しい人だと思うべきだし誰も保護した子供が銃刀法違反の疑いがかけられていれば手放して更正してほしいと思うだろうと納得した。子供のように全部手に入れられると夢見ていない、優先順位をつけられる大人だと彼自身もいっていた。特に最後帆高の後押しをするシーンでは妻に先立たれてしまった自分と彼を重ねる要因がなければ出てこない行動であったと思う。この物語で社会と自身の間に挟まれる一番重要な役割ではないのかと思うし、世知辛さや人間の弱さを知った人間だけが立てる位置であると思った。最後ビジネスに成功している点において監督の甘さを感じましたが、そういう人が成功する世の中になればと感じた。

夏美さん: 大学生就活期ということで私には一番年の近い人ですが私よりずっと大人びていると思った。大人びていると言うより性格が違うというか人当たりがよくて明るい性格で私とは正反対の位置だと思う。ただ帆高を助けた点についてはまだ家族を作っていないから社会に出ていないからと言う点で簡単に踏み切れたようにも思う。これがもし子供がいて自分の職業もあってという立ち位置であれば帆高を警察に届けているのはこの人だったのかと思う。特技はないと彼女はいっていたけれど、自分のを頼る人に優しく、情のある人になりたいと思った。

警察: また誰か1人の事情はその周りの人しか知らないのにそれを簡単に抑圧する社会が今の形なのだと心から感じた。ただ陽向がトラックを燃やしたシーンでは周りに死傷者がいないかきちんと確認してはいたし、ただ帆高に対して銃を持っている危ない子供という先入観を持っていただけなのかとも思った。その先入観が嫌いなのもあるし、特にイラついたからとただの高校生を地面に押し付け取り押さえるシーンはその人物に失望した。打たせないでくれよとはいったところに人間味はかんじたが、最後まで逃すつもりはないといった姿勢は現実を写していると思ったし、ご都合展開にならなくてよかったと感じる。

帆高と日向: 両親から家出して出てきた帆高(事情は書かれていない)と母親が亡くなった日向(父親はどうかわからない)両方未成年で東京で苦労していると言う境遇で惹かれあったのはわかった。しかし弟と姉話をつければ会えるように児童保護施設で育つこともできるし、帆高は理由もなく家を出てきている点で設定に違和感を感じたし、それを匿うのではなく確保しようとする社会は適切に動いているのではないかと今は思う。ただ私は両親が裕福で自由に働かせてもらっているが家族がいない、田舎に生まれた、それだけでこんなに不自由な生活しかできないのかと悲しく思った。もしできるなら彼らの願望通りになるような世界になってほしくもある。もしくは誰かが自分のために何かを変えてしまったとしてそれを自分で許すことのできる気持ちを人間は持っていいと思う。その先が東京が水没してしまう世界だったらあまりにも代償が大きい気もするけれども。(ただ帆高は拳銃を簡単に構えたり感情的なところが少し人間の倫理観を超越していて映画を見る人に理解してもらうためには性格設定がぶっ飛んでいるんじゃないかと思った。)

私の誰かに見捨てられたくないという自己承認欲がとても浮き彫りになった感想だと思う。海外留学へ来て前のホストマザーに突然移動のことを聞かされた時も、自分と過ごすよりも家を変える方が優先とか、結局お金を払っているからもてなしてもらえるんだと言うことを実感して、人間が繋がると言うのはそんなに簡単ではないと感じた。そういう意味で彼ら二人の心から通じた関係は羨ましいと思えたし、もしくは利害関係のない子供だから作ることのできるある意味吊り橋効果も一緒にもたらした絆だったのかもしれないと思う。私はもしこの先一人になってしまっても、誰かが助けを求めている時に助けられる人間になりたいと思ったし、そうすれば誰かに助けられなくても自分の生きている意味があると思えるようになるのではないかと感じた。